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“松任谷由実、ピチカート・ファイヴ、Mr.Children、MISIAなど、日本の音楽シーンをリードしてきた数多くのミュージシャンのCDジャケットを手がけ、新鮮なヴィジュアルイメージと革新的なプロダクトを生み出してきたアートディレクター、信藤三雄(1948〜)。写真家、映像ディレクター、書家、音楽家としても才能を発揮し、その作品は各方面のクリエイターにも影響を与え続けています。本展では80年代の初期作から最新の仕事に至るまで、時代とともにあり続けたアートワークの数々1,000点以上を展覧し、信藤三雄のクリエイティビティの全貌に迫ります。”

わが家から歩いてすぐの世田谷文学館は、いつも「通な」展覧会をする。なので、マニアな人は電車もバスも、交通の便が素晴らしいというわけではない、この世田谷の住宅街へやって来て、そして、そのマニアな世界を堪能する。今回、信藤三雄という、アートディレクターにスポットを当て、それが、これだけの規模で展開されるから、なんとも爽快だった。一言でいえば、爽快な展示。コーネリアス(小山田圭吾)やピチカート・ファイヴなど、ジャケットもポスターも、ツアーグッズも「洒落ている」という印象のデザインは、この人だったりする。個人的には、井上陽水の「Blue Selection」(このアルバムのツアーで、京都会館へ行き、始めて陽水の生歌を聞いたという記憶)や、ジッタリン・ジンの「パンチアウト」(この缶、とこのデザインは、中学の時の想い出)、同じく中学生の時に思わずジャケ買いしたフリッパーズ・ギター「ヘッド博士の世界塔」がジンときた。Mr.Childrenは、流行りすぎているので、自分でわざわざ買わなくてもあちこちで聞けたけど、「Q」は、もうジャケットが素敵すぎて買わずにはいられなかったし、MISIAのファーストアルバム「Mother Father Brother Sister」は今見ても飾れるジャケットだと改めて。

ポスターを並べた一角を見ていくと、昔はCD屋の壁がこんな風だった、と思いながら眺めていると、「思わず欲しくなった」ので、ポスターとしての機能も十分果たしつつ、おしゃれ・かっこいいというデザインはさすがだ。

カセットテープ、シングルCD、アルバムCDと大きくなっていく中で、やはりレコードジャケットは、バランスといい、正方形の潔さといい、ちょうどいい大きさだ。

CDで買ったものも、レコードのジャケットサイズになると魅力がぜんぜん違う。「ジャケ買い」という言葉が生まれたのも納得する。じーっと凝視して、何度も何度も見回って。この1つ1つの作品(レコード)が、何ヶ月、何年もかけて作られ、そしてその世界感を表現するためにいろんなアイデアを生み、ブラッシュアップし、その完成型が並ぶ姿は、本当に、例えばこの文字が横に書かれていたら、やっぱりイメージが全然違うな、なんて思いながら見ると、さらに面白かった。

ビーマイベイビー
信藤三雄レトロスペクティブ

@世田谷文学館
2018年9月4日(火)