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■SPEECH
(スピーチ)
アメリカ・ウィスコンシン州ミルウォーキー生まれ

個人的には、人生の折々に触れて、このSPEECHの曲が側にあった。大学卒業後、新卒で働き始めた会社で、初めて道を外れた離職。あの時、文字通りすり切れるほど聞いていたのがアレスティッド・ディベロップメントだった。それからソロになったスピーチを聞き続け、結婚式の披露宴では、ほぼスピーチの曲を使った。入場曲はLiving in the real world、退場曲はTraveler。芸術的な折り紙を見ているような言葉の重なり、とリズム。強弱含めて、スピーチの音楽は心地良い。そして、それだけでは終わらないのが、言葉の裏にあるメッセージ。SKITにも意味や世界感があって、アルバムを通して堪能出来るところが素晴らしい。
そんな音楽における強さは、彼が生まれ、育った環境がそうさせているのかも知れない。黒人コミュニティーが抱える問題、それらを抱えながら歌うナイトクラブ。音楽の持つパワー、それを聞く観客の熱量。その中で育ったという。

グループを組んで始めたスピーチの音楽は、グラミー賞で大きく評価される。それまでにはなかった世界感が、アメリカに浸透し、認められた証だった。が、そのグループ活動も休止。そこから、スピーチは、ソロとしていろんな音楽に挑戦し、色んなものを調整して、次々と刺さる作品を生み出していく。

実験的な作品のリリース、伝説的な人物を扱った作品のプロデュース、そして政治的な場面での露出。作品をリリースして、ツアーに出て、数多の作品をプロデュースする。一人で何役もこなすマルチプレーヤーだ。
もちろん、音楽でも、ボーカルはもちろん、ターンテーブルをまわし、ギターも奏でる。

ヒップホップであり、ソウルミュージックであり、そのどちらにも通じて、どこか新しく、常にネオ。カルチャーのど真ん中で、SPEECHはとにかくかっこいいのだ。

今、なぜかこれを記ながら頭に流れるのは、アルバム「THE VAGABOND」に収められたビートルズの名曲「Across the Universe」。ジョン・レノンとはちがったスピーチならではの良さが光る一曲だ。