Superfly
Superfly (2008年発売)

Hi-Five
マニフェスト
1969
愛をこめて花束を
Ain't No Crybaby
Oh My Precious Time
バンクーバー
i spy i spy
嘘とロマンス
愛と感謝
ハロー・ハロー
Last Love Song
I Remember

SUPERFLY。アメリカ人なら「やるね!かっこいいじゃん」ぐらいの俗語で使うこの言葉をアーティスト名に持つ越智志帆の1stアルバム。アルバムタイトルも、名刺代わりなのか、そのままの名前をつけている。

一言で、このアルバムは素晴らしい。

2008年というCDの売れなくなった時代に、これだけタイアップのついた曲を集めた1枚は、聞けば聞くほど「聞いたことがある」歌に出会う。だから、どうも最初は毛嫌いしていたが、とはいえ、この圧倒的な歌唱力(というより声)に悩殺されて、素直に?聞き続けている。正直に言うと、音楽的にというか1枚のアルバムとしては、この1stよりも2ndの「Box Emotions」の方が、音が分厚く、小難しさもないのでいいと言える。元々一緒に活動をしていた多保孝一とがっちりタッグを組んだ曲は、どれも聴いていて心地よい。さらにいうなら、おそらくこれから発売される3枚目のアルバムの方が良くなるのだろう。が、あえて、1枚目の、この「生」な感じのするアルバムを大好きな1枚にあげたい。

もう、嫌になるほど前向きな歌詞が続くのだ。それが、どうしようも心地のいい、クセになるような高低音・重軽音の声音をともなって。スーッと入ってくる。

一曲目、『Hi-Five』は、簡単にいえばハイタッチ。
「沸き上がるステージで 
誰より君の明日は光るだろう 
舞い上がれ 上の上へ」 

上昇するジェット機のように気分が盛り上がる。あの、声。行け!行ける!やれる!そんな勢いをもって、みんなでハイタッチしながら一緒に上に行こう!という曲なのだ。

二曲目の『マニフェスト』は、今現在が闇で、そこから夢見る光の世界。街全体・大人達が寝惚けている今、ブルーズこそがマニフェストだと歌う。未来へ導く光に向かって……。
「世知辛い世に生きながらも
夢追い人と呼ばれる方がいい
貴方の力を貸して頂戴」
一曲目に続いて「一緒に行こう!」的な歌だ。

個人的にSuperflyが好きな原点でもある曲、3曲目の『1969』は、ヒッピー文化の香りがする。1969年の夏の、あのウッドストック・フェスティバル。若者たちが熱く、世界中を旅し、いろんなものを見て、いろんなことを発していた「遙かな時代」。憧れる1969年の時代。「あの鼓動は ここに無い」。昔の時代に向けて、そんな「宝」を出して私は生きていくと彼女は歌う。

そして、これが一番好きだという人が多いのではないだろうか、
名曲『愛をこめて花束を』。

「この込み上がる気持ちが 愛じゃないなら
何が愛かわからないほど

愛を込めて花束を 大袈裟だけど受け取って
理由なんて訊かないでよね
今日だけすべて忘れて 笑わないで受けとめて
照れていないで」

「巡り巡る時を越え いつもあなたの所へと
この心 舞い戻ってゆく
無理に描く理想より 笑い合える今日の方が
ずっと幸せね」

vioket, indigo, black and blue
flame, yellow, purple, sky blue,
pink, yellowgreen, ash, brown............
あなたに贈る色は..........?

この英語のパートはまさに圧巻だ。

続いて『Ain't No Crybaby』

「青天の霹靂 容赦ないほどに
私をかき回し始めた
人生という名の戦場に向かうのよ
勝つのは私よ、no crybaby

生きることを戦場にたとえ、勝つと言い聞かせる人生に、恥ずかしくなるほどのストレートさとインパクトを感じ、それが変に聞こえない彼女の歌。

と思うと、一転して爽やかに歌い上げる『Oh My Precious Time』。夏の岸辺、恋人たちの淡く大切な時間を繰り返す彼女にサザンを思ってみたりさえする。

『嘘とロマンス』は、いまやSuperflyの代名詞、タオルをぐるぐる振り回すにはもってこいの曲だ。全部忘れて「笑い踊れよ」と。
「毎夜チャージさせてよ
愛に絡まるエゴ
夢心地のまま覚めない

毎夜止まないブギー
ハイで悩殺的にトリップ
忘れてほしい 誰か!」

そのぐるぐる回したタオルを、今度は左右に、ら〜らー、ららら〜のテンポでゆっくりふりたい『愛と感謝』。

「どんな時でも 心に笑顔咲かせたい
もがいてはまた 理想は空回る
いつもの光景

あぁだ こうだ 悩んじゃって
なんて面倒な生き物だろう
最高だって最低だって 多くは望まない
ここにいたい

今日も明日も 愛と感謝に生きよう
大切なものは忘れがちだけど
愛しい人よ 最高の笑顔を ありがとう
大地を踏みしめて ともに歩こう」


デビュー曲の『ハロー・ハロー』は、個人的にはやっぱり一番好きな曲だ。

「ハロー・ハロー 交そう
ここから全てが始まるよ
同じ目線で
ためらうことなく 無邪気に言うよ
ハロー」

歌の温度というか、表現したコトというか、なんて素晴らしいんだ、と思う。どこか知らない国の、初めての街の、雑踏や混沌とした道なんかでこの曲を口ずさみながら歩きたいな、と思う。

「ためらわずに交わそう」
「どうせなら裸足で出掛けて もう一度
さりげなく言うよ ハロー」

名曲だ!

最後の2曲は、彼女のパワーを見せつけてくれる。
まずは、彼女が唯一単独で作詞・作曲を手がけ、自らのピアノ弾き語りで歌い上げる『Last Love Song』。恋人たちの「分かれ道」をうたった別れの唄で、よくある若者の淡い恋、上京物語のような一曲だが、心にスパッとはいってきて聞き入ってしまうのは彼女の「声」がそのまま表れているからだろうか。繰り返し聞いて、いろんな風に聞ける一曲だ。

「変わり始める事を 恐れずに生きて欲しい
必ず待つ幸せから その目を逸らさないで」

そしてラスト、『I Remember』

「ひとりぼっちの臆病者は
苛立つ歯痒い自分を愛せなくて

言葉にならない
もどかしい心が 走り出した あの頃

I Reember
悲しみの雨が教えてくれた
絶望を希望の光に変えたメッセージだった」

悲しみの雨に濡れた夜の魂の叫び。このバラードは、ものすごく広がりのある一曲だ。

JETとのコラボ「i spy i spy」、そしてこれまた唯一彼女が詩を手がけていない「バンクーバー」などを含めても、どれもこれも、彼女の、レアな、そのままの、生の、歌ばかりだ。


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