ものすごく小さな展覧会だし、
世田谷文学館がもってるものの中から
「旅」
を抜き出して集めたという感じのものだが・・・
北杜夫の原稿にしびれた
森鴎外の娘のパリの生活に酔いしれた
そして何より
植草甚一のニューヨークにぼく完全にやられた。
それが世田谷文学館で開催中の
「旅についての断章」展だ。
世田谷美術館と世田谷文学館はなんとも好きだ。
それは、雰囲気が実に「静」なのだ。
来ている人も、ゴッホやシャガールの言わば「見ておこうか」的な
騒がしさがなく、ただじっくり眺めにやって来る人が多い。
そもそも世田谷の中でも交通の便が悪いところにあるからして。
展覧会の構成としては、コレクション展なので非常にシンプルだ。
まずは、「女の旅」。
女性作家と旅をまとめている。この中では、鴎外の娘、小堀杏奴が面白い。
鴎外のパリ生活を自分の目でも見ようと旅立ち、そこで岡本太郎など当時の日本人と交流する。
鴎外の後妻であり、母であるしげ宛てに送ったエアメールが良い。
次に「男の旅」。
北杜夫の原稿は非常に細かく、遠藤周作の名作「深い河」は、びっしりと文字が並ぶ。
沢木耕太郎も丁寧な字で方眼紙を埋め、編集記号や朱書きもびっしり。
タイプ打ちされた書籍ばかりを見ていると
この原稿の段階ものが、非常に「近く」感じるし、なんとも性格まで現しているようで
言葉として実感できる。
「空想の旅」ではとにかく荻原朔太郎がよい。「冒険の旅」の漫画もなんだかよかったな。
そして、「ニューヨークへの旅」。
植草甚一のポップでアグレッシブな生活を切り抜いたようなパネル
そして、年賀状。どれもこれも良かった。便所の話は、ぼくが植草甚一を知った文章でもあったので
その生原稿が見れたのは、個人的に非常によかった。