大麻について
2008年11月30日
今年、大麻取締法違反容疑で逮捕や書類送検された検挙人数が、10年前の2倍、一番多かった2006年をも上回って最悪のペースだという(10月末時点で2149人)。特に、学生の間で広がりを見せており、大学生が自宅で大麻草を栽培したり、学内で売買したりという事件が続いた。(特に10月以降、幕内力士や俳優などと一緒に、立て続けに新聞やテレビで○○大学の学生が大麻所持などと報じられた)。

そもそも大麻とは?

中央アジアを原産とする大麻草は、乾燥させたものを「マリファナ」、大麻樹脂を圧縮加工したものを「ハシシュ」と呼び、日本では大麻草の栽培、所持、売買を禁じている(1948年施行の大麻取締法)。※使用には罰則規定がなく種子は対象外。

麻薬・薬物という印象から、覚醒剤やコカインと混同する人も多いが、ヨーロッパやアジアを旅していると「タバコ」感覚で大麻は使用されている、と実感する(多くの国では違法)。体への影響も、喫煙・飲酒レベルだと主張する論が多く、オランダでは「取り締まり」自体をやめ、合法化したという例もある。ロンドンのトテナム・コートの裏道では、「マリファナ?」と声をかけられ、カトマンズのタメル地区では「ハシシ?ハシシ?」と顔を寄せてくる人に会う。上海でも、ジャカルタでも、よく似たものだ。蔓延度?からいくと、飲酒運転レベルだと不謹慎なことを思ってしまうほどなのだ。現に、英国の日曜紙が調査したところ、16歳〜34歳のイギリスの若者で、半数近くの46%が違法薬物を使用したことがあると答え、その大半が大麻、動機を「好奇心」とした結果が出ている。大学生時代に好奇心からちょっと手を出すことの出来る大麻、そして、それほどまでに身近で蔓延している実情。それが「外国だけの話」とするのは、少し都合が良すぎる。同じ状況(同程度の蔓延度)が日本でもある、と考えた方がいいのだ。その証拠が、ここ数ヶ月間の東京や大阪における大学生の連続逮捕なのだ。ここに来て、取り締まる側も引き締めを強めているとさえ思わせる。

飲酒運転は、「みんなやってるから」「自分だけは大丈夫」「ちょっとそこまでだから」という「甘さ」のせいで、なかなか減らなかった。が、何の罪もない犠牲者が増え、車が殺人兵器になりうるという怖さ、さらには飲酒運転の罰則の強化によって数は減ったという。(まだまだ、ひき逃げなど悲惨な事件は多いが)

「甘さ」を取り締まる。未成年者の喫煙を防止するため、日本固有?ともいわれるタバコの自販機にタスポによるガードをかけたのも、その一つだと言えるだろう。

そして、大麻摘発の数だ。蔓延度なる分母の数が増えると、摘発数の分子も増えるという単純なものではなく、もしかすると、分母は数年前から同じでも、それを摘発する側の「本気度」に差が出始めていると考えられなくもない。仮にそうだとすると、大麻に関してこれだけ本気になるのはなぜか。

それは、大麻が「ゲートウェードラッグ」という性格のものだからだ。

確かに大麻には依存性成分が含まれ、陶酔感や知覚・感覚の変化が現れる。行き過ぎると(13ミリグラム)、遊離感、幻視、幻聴が生じるとも言われている。そういう意味で、通常の喫煙・飲酒の量の幻覚よりも、大麻の方が有害だとWHOの報告書では明言している。しかし、覚醒剤など、他の薬物に比べると(比べる必要はないのだろうが)、その症状はやはり軽い。だからいいか、というのではなく、大麻から覚醒剤、コカインなど、薬物へ手を出す人が多く、この「そのぐらいならいいか」という軽さが薬物常用者への入り口(ゲートウェー)となっているのだ。

大学生になって交流の輪も広がるだろう、「やれること」も増える。東京や大阪など、例えば地方からそんな大都会に出てきて、はじめての一人暮らしなんていう環境の「緩さ」も、麻薬への入り口は広く、ついつい、いけないと知っていながらも、まるで「校則違反」でもするかのような手軽さで、大麻に手を出してしまう。

大麻について言えることは、身体に害があることは明白なのだ。それがタバコや飲酒にくらべてどうの、という以前に。そして、何より、所持し売買することは「違法」なのだ。そうと知ってながらも「ついつい」手を出してしまうほど、本当はカンタンなものでもないし、その入り口から笑って入っていって、戻れなくなった者も多いのだ。

薬物の世界は、本当に恐ろしい。これが完全なる事実である以上、変に広がったこの蔓延度と、門戸の広がった入り口を、がっちりと閉じなければならない、そうゆう時期だと思う。


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