まず太陽の塔の背面にある顔、過去を象徴する「黒い太陽」を見ながらスロープを下って館内入り口へ向かう。これまでは締め切られていたエリアだ。ここから予約のQRコードを見せて入館料を払う。入るとトイレはなく、写真撮影も禁止となる。そのまま岡本太郎のデッサンを見つつ、行方不明のままになっている第4の顔、「地底の太陽」をみる。復元された顔は、現代の技術と相まって、とても現代的だ。これが昭和の、48年も前に構想されたことに感動する。
このブルーのエリアで、プロジェクションマッピングのような流れる映像世界は、それだけでも入場料がペイできるとさえ思える。「いのち」「ひと」「いのり」。大阪万博(1969年)のテーマ館として地下展示された根源の世界へと誘ってくれる。
ここで16人の小グループに分かれる。ブルーから真っ赤になるエリア。そこから太陽の塔の内部へと入ることになる。内部は、下から生命の進化をたどるように上に伸びる「生命の樹」にそって進む。外観で言うと、胸の部分にある現在を象徴する正面の「太陽の顔」あたりまで樹が伸びている。
カラフルな樹。そこに33種類ものいきものたちのオブジェがある。太陽虫(これはLED技術で細部まで光るようになっている)やオーム貝、アンモナイトにサソリなど、なだらかなスロープと階段を登っていく。一定間隔で係の人が説明をしてくれる。万博当時、耐震基準が現在とはちがったので、館内にエレベーターが設置できたことから、数分でエレベーターに乗ってサーッと見学していたところを、今はゆっくり歩いて見学する。当時、いくつかのオブジェが機械仕掛けで動いていたらしい。
恐竜のゾーンになると、48年間、一度も樹から降りていない(1トンにもなるので)ブロントサウルスがあり、少し進むと頭部の機械がむき出しになったゴリラなど、48年間の年月を感じさせる復元となっている。下から上って、見下ろすと、これまたすごい世界が広がっている。チンパンジー、ネアンデルタール人、クロマニヨン人。単細胞だった生命が人類の祖先までたどる時代を、一本の樹の中で表現した岡本太郎の発想に驚くと共に、今、見ても、まったく古くなく、むしろ新しいということに驚く。
階段を登り、ちょうど腕?翼?の部分。内部はカラフルで、どこかタイムマシーンの入り口にようだ。そして、見上げると「未来」という螺旋が、真っ赤な世界から、どこか真っ白に、とてもピュアに続いている。万博開催当時は、太陽の塔を囲むような屋根が着いていた。エレベーターは、どんどん内部を進んで右腕方向の出口へと続いていたらしい。思い出すのは愛地球博。マンモスの化石をみるのもムービングウォークでさーっと流し見た記憶がある。
当時、大阪万博で内部を見た、という方も、もう一度尋ねる価値はある。今回は、流し見るのではなく、凝視できるからだ。真っ赤なヒダを作る壁一面の造作。それが、とてもとげとげしい分、樹に宿るいきものたちのアートが、迫るように生き生きしてくる。
テーマ、コンセプト共に素晴らしいのは言うまでも無いが、とにかく、この内部に広がる世界は、そこに建って、歩いて上るにつれ、ただ、単純にアートだということが何より素晴らしい。スペインにはガウディが作ったカサミラやグエル公園がある。ニューヨークにはバスキアのストリートアートがある。台中やマレーシアの古都にも独特なアートは存在する。が、ここは、この内部の閉ざされた生命の世界は、上っていくうちにどんどん染められ、高揚していく過程が、どこよりも特別で、個人的には信じられないほどのアート世界に浸れるのだ。