令和元(2019)年10月22日、即位礼正殿の儀において、天皇陛下が即位を公に宣明され、その即位を内外の代表が祝い、安倍総理大臣が万歳三唱をして、大砲が打ち鳴らされて。そんな厳かな儀式の中で、この高御座と御帳台は、テレビ画面を通しても、しっかりと日本の美しさを伝えていた。目を奪われ、まさに平安絵巻の世界になんとも言えない心地の良さを感じた。こんな儀式を、高層ビル群の大都会、東京の皇居で行うという幅の広さ、時間の深さ。何とも、いち日本人として、この美しさには自信を持った。

そんな高御座と御帳台を見ることができる。特別公開を知ってから、この日を待っていた。特別公開は、東京と京都の2箇所のみ。それも数週間と期限が短いので、混雑は必至だ。が、並んでも見る価値は十分にある。

まず、博物館のエントランスで、特別公開のみに参加する人は、左側の入り口から入って、白いカードをもらう。それを首から提げて無料で本館展示室に入る。この日は、連休中日、それも開館まもなくの午前中は人が多いので、夕方を狙って行ったが、待ち時間は40分。ツアーの団体客が、旗を持つ添乗員さんの後ろに大量に並んでいたりもした。小雨も降って、なかなか大変だったが、列がけっこうすいすい動くので、すごく待たされている感じはない。特別展の写真撮影は可、フラッシュ、三脚、動画は禁止。

ガラスに囲まれてふたつ並んだ高御座と御帳台。とにかくきらきらと美しい。そのキラキラがまずは目に飛び込んできて、その後に、朱と黒の漆の奥深さが追いかけてくる。まずは手前の高御座から。総高6.48m、幅6.06m、奥行きは5.45m(基壇部)1人が入って、一番美しいバランスの大きさと感じる。そして八角形の安定した形状に加えて、鳳凰が9羽。てっぺんの大きなものと、8本の柱の上にそれぞれ置かれている。真ん中の椅子が、これに座った人はいるのかどうか、座ったら、どんな座り心地なのか、そして、天皇陛下のみぞ知る、中からみた内側装飾はいかほどなのか、などと考えるだけで、想像が膨らんで、その膨らんだ想像を決して裏切らず、さらに上をいくだろうことが想像できるだけの、精巧さと丁寧さ、技と美を兼ね備えた芸術作品になっている。少し小ぶりな御帳台は、総高5.67m、幅5.30m、奥行きは4.77m(基壇部)。丸みを帯び、上には鸞がある。どちらも同じような造りで、2つが並ぶと、それぞれに美しく、並べて見られるのが、本当に貴重、と思わせる。

この高御座と御帳台は、普段は京都の紫宸殿にあり、平成と同様に、この令和でも、皇居の松の間にて即位礼正殿の儀に用いられた。テレビでは正面だけしか映らなかったが、ぐるりと裏に回ると背面も見ることができて、そこには階段がある。この、後ろのつくりも美しい。高御座を左側から見て、じりじりと正面に近づき、そうして高御座と御帳台の間にたって両方を見て、御帳台の正面にたって、そのまま左側から。ここで、御帳台を手前にして高御座とふたつを並べてみることができる。そして、御帳台を真横から見て、そのまま背面に回り込み、御帳台→高御座の順で背面をみたら出口。このコの字型に動く間に、どこを切り取っても素晴らしい造形があり、その美にただただ嘆息というのが正直なところだ。

そこから第二会場に移って、即位の礼の威儀物をみる。弓、太刀、ほこ、たて、鉦と鼓。儀式の威厳を整えるためのもので、確かに、どれも1つ1つがシンプルで奥深い。さらに中央には束帯と五衣・唐衣・裳のマネキンがある。これらの衣装が、ともかく色が深く、この色合いはさすがだなと感心したおしたら、パネル展示を流し見て出口へ。

とにかく「今しか見ることの出来ない」モノなので、目に焼き付け、ふと、和の美を感じたいとき、こっそり思いだすのには、もってこいだ。























→ atelierに戻る


Special Viewing The Imperial Throne and the August Seat of the Empress
特別公開
高御座と御帳台
@東京国立博物館
2020年1月12日(日)