稲森和夫氏の著書『生き方』より抜粋。
“そのとき私は、「手の切れるようなものをつくれ」といいました。あまりにすばらしく、あまりに完璧なため、手がふれたら切れてしまいそうな、それほど非の打ちどころがない、完全無欠のものをめざすべきだ。そういうことをいったのです。
「手の切れるような」という形容は、幼いころ私の両親がよく使っていた言葉です。目の前に理想的な完成品が具現化されているとき、人間はそれに手をふれるのもためらわれるような憧憬と畏敬の念に打たれるものですが、両親はそれを手の切れるようなと表現していたのです。
それが私の口からもついこぼれ出たのです。「もう、これ以上のものはない」と確信できるものが完成するまで努力を惜しまない。それが創造という高い山の頂点を目指す人間にとって非常に大事なことであり、義務ですらあるのです。”
2015.07.12記