Thai Food
[上] バンコク・カオサンの屋台
[下] 大阪・南船場「TAWAN THAI」
ホッと落ち着ける食べ物。お茶漬けに、飲んだ後のあっさりした塩ラーメンに、濃いホットコーヒー。……確かに。
カオサン・ストリートというのがある。タイの首都、バンコクの隅っこに長さにして約300mほどのフツーの道。その両脇に外国人(主にバックパッカー)を相手に商売をするゲストハウスや飲食店が並んでいる。最近では、そんな外国人に混じって現地バンコクッ子の高校生の姿なども目立つのだが、僕も、例に漏れずここを拠点に動くことが多い。ただ、10年ほど前の通貨危機以来、暴落したバーツをきっかけに物価があがり、その後も修正されることなく、上げ止まりしたゲストハウスは、決して「安い」というわけではない。そして、周りに林立するビル群に押され、いわゆるところの「アジアな風景」は、もうないと言ってもよい。セブンイレブンも、ファミリーマートも、ある。ただ、他にはない居心地の良さ、外国人旅行者にとってこれほどに便利な所はなく、カオサンから往復でコルカタまで、なんてザラに聞く話である。
アテネからの便で同じになった日本人女性に連れられて、僕が始めてカオサンに行ったとき、「食事はここよ」と教えられた屋台(写真上)を始め、パクチーも難なく食べられる僕は、このタイ料理の辛さと酸味にやみつきになり…。どの都市に行ってもチャイニーズを食べていた僕にとって、それを代替としていた「味」は、正にこれだったのかと発見した気分だった。忘れられない、だからこそ、大阪で「これぞ」というタイ料理屋(写真下)を教えてもらったとき、美味しすぎて、綺麗すぎ、それに加えて高すぎる(バンコクで食べるのと比較して)とはいえ、やっぱりタイ人シェフが創り出す料理には「あの味」があって、辛ぇ〜と大口をあけて掌で扇ぎながらも、「ホット」になれて、デザートあたりで、「ホッと」するのである。