東京という街を、様々な断面で切りとる写真が見事な写真家の展覧会だけあって、一枚の写真から見る側に膨大なシーンを想起させる。中野正貴という写真家をしったのは『TOKYO NOBODY』という写真集。人であふれかえる東京の街の、誰もいない時間帯の断面。その後、『東京窓景』で切り取られた普段みる街並みを見せてくれた。

お台場のフジテレビ本社以外は、まだ何も無く、「作られている」最終を映した連続写真、国立競技場、東京スカイツリーなどの建設中のもの、新宿東南口の人の居ない写真、川のある光景、などなど東京で、東京を見るという空間は、住んでいる者には面白い。ここで生まれ、育ってきた息子には、あ、ここっていうことは、この電車が走っているはず、なんて視点から写真を楽しんでいるというのもあり。それぞれの楽しみ方がある。観覧している人には外国人も多かった。

さて、まずは幅4m、縦1.5mの銀座中央区(1996年)のNOBODYの写真から始まる。人が本当にいないのか?という目で眺めて見て、日の丸が掲げられているので祝日か、と思い、これ、何時に撮ったんだろうなんて考えていると、ふと、「箱」としての銀座も、そこに人がいることを思わせる不思議な世界感だなぁ、と気付く。この気づきから、他の写真を観てみると、余計におもしろくなってくる。外苑前、内幸町、六本木など、大きな写真パネルが並ぶ空間は、写真集をペラペラしているのとは全く違う爽快感がある。1つひとつの写真の色が、見事なところはいうまでもなく、そのレイアウトも素晴らしい。写真撮影可。何人かは、大きなカメラをもってきて、写真を、大きなカメラで撮るというシュールな光景も見られた。

気に入ったのは、日本橋の窓景、窓掃除の人ごしに見える光景だったり、スタジアムの審判席からホームベースを観る(手前に食べかけの弁当がある)だったり、新宿のライブハウスだったり。1990年代から2010年代の30年間の間だの、東京の画地を切り取った写真は、計168点。東京タワーのシンボリックさには圧倒されるし、家の中から窓景を撮っているので、逆に、その家の中にこそ「東京」があるようにも思えるなど、楽しみ方が膨らむ。

砧公園の桜の写真もよかった。新宿ゴールデン街の雪景色も良かった。それぞれの街が、一瞬一瞬に見せる「違った顔」をみるだけでも、この写真展のタイトルが「東京」であることに納得させられる。






























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TOKYO MASATAKA NAKANO PHOTO EXHIBITION
中野正貴写真展「東京」
@東京都写真美術館
2020年1月25日(土)