ヴィトン=旅、というイメージは正直ぜんぜんなかった。ハンティングワールドは、地球上のどこに行ってもタフで使えるものを作り続けた、のと同じく、ヴィトンもまた、さまざまなモノを運ぶ「バック」を軽量で丈夫につくったことで有名になったことを知る。
ルイ・ヴィトンというブランドが、紀尾井町(ホテル ニューオータニの前)に特設会場を作り、そこに期待以上のテーマと作り込み、コレクションで展開するのがこのEXHIBITION。入場は無料。しかも、しっかりしたリーフレット(パンフレットに近い)は付くし、帰りにはポスターまでもらえる。これは、一つの広報であり、それがこのレベルという所に、さすがはヴィトン、と思わせたりするのだ。
さて、本題。もともろ、荷造りの木箱を作る職人だったルイ・ヴィトンが、軽量・丈夫な「かばん」を作り、蓋をフラットにした定番を生み出す歴史を知り。そんな一つひとつを眺めながら、「この時代は、運ぶモノがあって、それをいかに運ぶかを箱(かばん)が合わせていった」ということだった。今の時代、箱(かばん)はスペースが決まっていて、そこにいかにコンパクトで軽量化したモノを入れるか、という順になっているので、とても斬新だった。単純に、タンスをそのまま運ぶというスタイル。
運ぶモノがあって、それに合わせた箱がある。ラクダに乗るような砂漠の旅、豪華客船のような船旅、そしてオリエント急行?かと思わせる列車の旅。車の旅、そして飛行機の旅。
旅する様々なスタイルに、ヴィトンの鞄がとても合っている。モノグラム・キャンバスや格子柄が有名なヴィトンにも、真っ赤やシンプルなものまで様々。一つひとつの鞄を見ているだけでも、旅人として、街歩き人として、いろんなシーンで想像が広がる。
あぁ、やっぱりヴィトンの鞄っていいな、と思わせる。
夢を形にするスペシャルオーダー。ルイ・ヴィトンは、創業以来、顧客の要望に応えるユニークなスペシャルオーダーを受けてきたと説明する。帽子や衣服、靴(それもシューズクリーニングキッド専用)、絵画(キャンバス)や書籍、レターセット、レコード、バイオリンなど様々な楽器。海老蔵の歌舞伎道具?化粧箱まであった。茶道セットまで来ると、さすがだ。展覧会の最後にニッポンエリアがあった。日本の有名なデザイナーとのコラボレーションが並ぶ中で、板垣退助用のバックが展示されているところに畳があり、その縁がヴィトンのモノグラムだった。もともとは紋からインスピレーションを受けたデザインの逆輸入的で面白かった。
出口で、ヴィトンと旅のリンクを知ると、最後はヴィトンが出版するガイドブックが並ぶ。このまま、旅立ちたい、と思わせる展覧会だった。