天王洲という場所、そして倉庫(感)のある空間。
ここにバンクシーがぴったりくる。
バンクシー公認?と言われるこの展覧会は、コロナで一年延長になった末
ようやく開催された。バンクシー人気を目の当たりにしたのは
時間を決めた前売り拳を買ったにもかかわらず、入場まで50分も待った。

見所はなんといっても、美術館にお上品に陳列される作品ではない
荒々しい演出。それは映画のセットのような。

例えば、『ハンマーボーイ』は、ニューヨークで実際に見た時と紛うような
再現の正確さ。ただひとつ、スーパーの広告がないだけだった。

それを元に考えると、『Love Is In The Air』も感嘆の度合いが増す。

世界中に散らばるバンクシーのメッセージ。
『Aachoo!!』は、坂道を再現するために作品自体が斜めに配置されている。
『Spy Booth』は、電話ボックスまで近寄って、まるで街なかにいるような感じ。
『London doesn't work / I love London Robbo』のネズミ、
『Girl with a Pierced Eardrum』のマスク、
『Whitewashing Lascaux (The Cans Festival)』の見事な再現。
会場をここまで歩いて痛烈に感じるのは、ストリートにいるような没入感だ。

ハンマーボーイを越えると、一際目を惹くピンクの像、『Barely Legal』。
音声ガイドでは、中村倫也さんの声で、
この作品は、本当は本物の像にペインティングされた、と。

横浜のバンクシー展で見た小さな作品が、ここでも陳列されていた。
『Laugh Now』、『Monkey Parliament』、『Sale Ends』
『Love Rat』、『Bomb Love』などを眺める。

そのまま進むと、『THE WALLED OFF HOTEL』の再現に。
世界一眺めの悪い壁viewのレストラン。これには強烈なバンクシーの
メッセージを感じる。

ホテルを出ると、ドーンと現れる『Flower Thrower』。
紛争地帯パレスチナのベツレヘムで描いた「火炎瓶の代わりに花束を投げる男」。
バンクシーの代名詞となっているこの作品も、
実際のストリートで描かれた大きさを目の当たりにして
美しいとか、素晴らしいとかいう感情とは違う
とても、不思議な力を感じる。
この作品を見られるだけでも、この展覧会の価値がある。

ガザ地区のストリートの再現も素晴らしかった。
貧しく、死を意識するような日々に、かわいい猫の作品を残したバンクシー。
この『Giant Kitten』は、見事な対比だ。

その隣にはベツレヘムに残された『Bullet-Proofed Dove』。
ロック・オンされた幸せの象徴、白い鳩。

シリア難民の息子であるスティーブ・ジョブス氏を
難民キャンプに描いた作品の再現を通り過ぎると

最後に『Girl with Balloon』。
ロンドンのウォータールーの階段に描かれた再現が
最後の最後に見事だった。

決して、広い会場ではないが、こんなに満足感のある展覧会は
珍しい。

バンクシーを体感するには、空気感がぴったりだった。
ブリストルへ、すぐに飛んでいきたくなる。





























左)展覧会のハンマーボーイ / 右)ニューヨークにあるハンマーボーイ(本物)

























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WHO IS BANKSY?
バンクシーって誰? 展

@寺田倉庫 G1ビル
2021年11月27日(土)