Here, Now, I have Reached the Grandest Start of My Life
(さぁ、今、我が人生の最大の出発にきた)
新宿に昨年10月に出来たばかりの草間彌生美術館。90分間区切りで70名ずつ、日時指定の完全予約制であるこの美術館は、2ヶ月前に予約が開始となるとすぐにいっぱいになる人気ぶり。正直、大江戸線の牛込柳町から歩いて6分という立地は良くない。そして、大きな作品のイメージがある草間氏にしては、少々小ぶりな箱の印象。だが、シンプルでいて、おしゃれな造りの外観・内観のデザインが5階まで貫かれて、シンプルだからこそ映える草間ワールドの世界。そこは特別な空間だった。エレベーター内も赤いドットでかわいく仕上がっている。3階から4階にあがる吹き抜け階段から眼下に広がるカラフルなアクリル・キャンバス16枚は、なんとも圧巻の極み(階段下の2枚は実質見えないが)。ぼんやりとしてしまう。
さて、最近のミュージアムならではのチケットレスな入館。ネットで予約すると二次元バーコードが発行され、スマホで見せるだけ。1階には、小さなショップがあるのみで、展示は2階から。人数制限がないと、こんなにゆったりは見られないだろうな、と。この日は普通の平日、それも雨。さらには昼時の12時半からの回とあって、30人弱しかいなかった。この小さなフロアには20枚の小さい作品が並ぶ。どれも1950年代のもの。紙がしわしわになっているところからも昔の作品であることを感じるし、それ以前に、これほど有名な作家になる前の草間の魂が垣間見える。「無題」の抽象画が多い中、『疑惑』と名付けられた赤と黒のスクエアの並び、そして、黒い中にスポットライトを浴びたようなドット、『島』は目を引いた。
3階にあがると、一気に大ぶりの作品(194cm四方の正方形)に、そして、どこか黒い世界が多かった作品から、カラフルな世界へ変わる。この空間のコントラストには思わず声がでる。階段から上がって、真正面にある作品、『宇宙へ見物に行った少女たち』の色の兼ね合いに笑顔が漏れる。その上の『人生を愛してきた私』、その横の『人生の距離』、『無限の心』。ん?
カラフルになって、大きなサイズの作品に変わったというより、作品のタイトルが長くて複雑になっている。1950年代の彼女は、小さな作品の多くが「無題」だった。あったとしても『A
FACE(No2)』や『Leaves』『動物』などの単語だった。それが2010年代になって、『青春をたべてみたい』『人生の行路』『わが五体が生を去る日は』(フライヤーにある作品)、『恋の侘しさを越えて』『原爆の足跡』『我が死の祭壇はかくのごとく』などに。そんな中、『夢は舞っていた』という柔らかい世界感が、直感で好きだった。
4階には『無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく』というミクストメディア作品がある。2分ずつ、6名が順番に入っていく部屋。小さな透明の中にかぼちゃが並び、上下左右にマジックミラーがあり、サイズは無限。どこまでも黄色のかぼちゃが続いていく。暗くなり、1つずつ、少しずつ電気が付いていく。
最後は5階。屋上に金色とピンクのかぼちゃがある。珍しい色味。白い外壁から青空なら、そのコントラスト、そして太陽に金色が反射すればきれいだっただろうな、と雨の日で残念だったが、それでも、1つの作品が放つ強烈な存在感を目の当たりにした。
草間彌生美術館
YAYOI KUSAMA MUSEUM
さぁ、今、我が人生の最大の出発にきた
@東京 新宿区弁天町
2018年7月5日(木)