チューリッヒ美術館展 @国立新美術館(東京)
2014年11月8日

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← ジョアン・ミロ 《体操する少女》 (ポストカード)

パウル・クレー 《狩人の木のもとで》 (ポストカード) →

← ピート・モンドリアン 
《赤、青、黄のあるコンポジション》 (ポストカード)

全てが名作で、全74点、どれも代表作。そんなキャッチコピーの展覧会「チューリッヒ美術館展」は、時代的には印象派からシュルレアリスムまでが、巨匠の部屋と時代の部屋に分かれ、それが交互に並ぶ構成で展開される。

数的にもちょうどよく、展示のスペース取りもゆったりしていて、解説も、なんともちょうどいい、良質のベストアルバムを堪能した、という感じだった。

まずこの展覧会の「顔」とでもいうべく、アンリ・ルソーの《X氏の肖像(ピエール・ロティ)》。この作品は、三歳になろうかという息子が「おじさん、おじさん」と言って離れない不可思議な魅力を持つ一枚だ。トルコ帽にひげ、顔の陰影と猫というところに目が行くが、本物を見ると、最初になぜか右手のタバコが目に付いた。

巨匠の部屋としては、セガンティーニ、モネ、ホドラー、ムンク、ココシュカ、クレー、シャガール、ジャコメッティ。時代の部屋は、ポスト印象派、ナビ派、表現主義、フォーヴィスムとキュビスム、抽象絵画、シュルレアリスム。

水面に映った夕景を塗り重ねたモネの《睡蓮の池、夕暮れ》は大きさとその世界感が圧巻で、ひまわりとは一転、なんとも重く沈んだゴッホの《タチアオイ》。ゴーギャンの《花と偶像のある静物画》も、イメージとは違う暗めの偶像を描き、セガンティーニの原色の点々は、何とも柔らかいハーモニーだった。ダリは流石の《バラの頭の女》で存在感を放ち、ピカソは「裸のマハ」を彼風に描いた。クレーはチェス盤をアートにしていた。彫刻の世界のジャコメッティは、あの独特の寸法で、彼特有の世界を作り出し、「出口」が見える最後の部屋で、なかなか抜けられない思いをした。

その中で、彫刻家のジャコメッティとは親戚にあたる人物で、アウグスト・ジャコメッティの《色彩のファンタジー》は目を惹いた。イッテンが色相環をモチーフに作品を描き、その横に、黄色をベースに、向こうからこちらへ光や輝きを解き放つような一枚が、あった。タイトルもすごくよく、これはかなり好きな一枚だ。

またルネ・マグリッドの《9月16日》は、暗い森に「シュッと」した樹が一本。人間で言えば9頭身ぐらいのモデルスタイルで立っており、そのちょうど眉間にあたる部分とでもいうのか、三日月が輝いている。これも、なんとも不思議で、大好きな一枚になった。

もともと大好きなミロでは、《体操する少女》という小さな作品の前にしばらく立ち、凝視して「少女」を探してみたり・・・(足を開いて寝そべってる?とかいいろ考えながら、体操も少女もない、と決めて次へいってみたり)。クレーは、まるで洞窟画?のようなプリミティブな作品を、ものすごく明るい色彩で描いていた。漫画的で、平面的で、なんともいい。ピエロの涙を削りとった作品の横にこれがあったので、余計に目に付いたのかも知れない。

そしてモンドリアン。色の3原色のコンポジションは、黄色が、面積とは反比例して印象的な一枚だ。この展覧会の図録は、表紙が何種類か用意されていたが、このモンドリアンの表紙が一番いい。

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