僕は完璧な風景を前に敗北する
ただ呆然としていればいいものを
そのまま伝えようとするもんだから
こうやって無力と不足に陥ってしまう

葉っぱの裏のうすい緑がつくれない
例えばそういう事でパレットの色はいつも虚構だ

だったらと取り出したデジタルビデオにも
映し出せない広がりと空気がある

知っているんだ、僕はそれが不可能なことを


僕は自分の気持ちを前に敗北する
曖昧で複雑で無形で変動し続け
そのまま伝えようとするもんだから
自分でも分からなくなって苛々してしまう

好きと嫌いの理由はそんなに単純じゃない
例えば誤解される多くがそういうことではないのに

だから僕が言いたいのはこうなのだと付け加えても
おぼろげに揺れるコアは掴めない

知っているんだ、僕はそれも不可能だということを


一切を拒み、一人で感嘆し思っていたら
無力を嘆き 不足に脅え 苛々することもないのか

だとすれば、見たモノや気持ちは
この僕から僕へと伝達する術すら失い 鈍感となり
空白になった場所には映るべき景色も無くなるのでは?

そんな夜のヒトリキリは 御免だ


僕の発した言葉から 君が想像する
そこに生じる僕と君のズレ
正面衝突せずに ギリギリの所ですれ違い
スムーズに行き来できる現代のシステム

そんなコミュニケーション

僕の言葉を君が誤解する
それを訂正するためにまた話しかける
何度も触れあえるための絶好のチャンス
一度きりを回避してくれる伝統のシステム

それがコミュニケーション

上下左右 交差して
手を伸ばせば触れられる距離

僕らはそんなコミュニケーションを介して繋がる
無力と不足を嘆き、歯がゆさに苛々しながらも
それでも、ヒトリキリを恐れて繋がろうとする

コミュニケーション
だから「ミス」なんてない
あるとすれば、すれ違い
だから、スムーズなんだと考えればいい

僕は 何度でも発しようと 
少なくとも それだけは拒否せずにいようと決めている



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コミュニケーション
by Shogo Suzuki