あれも、これも
あっちにも、そっちにも
うまく、うまく
まるく、まるく

そんな事ばかり考えて生きてきた


だから「良い」と言われる
なのに「良い」とは思わない


なんでもない海岸の
どこにでもある空き缶さ。
錆びることもできないアルミニウムで
ただのゴミとして停止している。


空に向かって伸びる階段の側で
僕は、下を向いている。


それは、
朽ちかけた木製の階段。
金木犀の香りがする。
昇りきった時には
空が、ある。


そこに階段があることで
いつかはきっと、と願うことで
毎朝起きれた、同じように動けた

でもどうせ、
ずっとここにいるのかなと思えば
急に年老いて、切なくなる

ここ、最近。

僕は夢想しながら
階段の側で右往左往する

僕が昇る時、
そう決めた時、
一体、どれだけの人を裏切り
叱責を受け、脅かされ、見放され
ひとりきりになるのだろう



いつもように夕暮れは
階段に片足を乗せて
ぼんやりと見上げてみる。


とても綺麗だった。


ふと、
それだけいいじゃないか、と思った。

この階段を昇るのに
その一歩を踏み出すのに
台風も、
カラカラと不安定なのも、
今までへの裏切りも、

綺麗だと思う方へ
行きたい未来へ

挑戦しよう、と腹を括った。
そして祈った。


昇りきった時
そこは、カラかもしれない。

だけど見上げている今
この場所からは
とても綺麗に見える
行ってみたいと思う

そこへ、その空に向かって

僕は朽ちかけた階段を昇り始めた。



  

空に向かってのびる階段

by Shogo Suzuki