ふるえる右手でコーヒーカップを口に運び、左手にはタバコ。チェック柄のテーブルに5つのコーヒーと灰皿。スティーブと、彼をスティーブンと呼ぶ男の「変な出会い」。スティーブンと呼ぶ男は、本当に暇なので、歯医者が嫌いなスティーブの代わりに歯医者に行く。

フッと笑える11のエピソードで綴った短編集。コーヒーとタバコ、身体に悪そうな2大要素だが、ベストコンビネーションなんだという、なんというかそういう時代の、可笑しな映画だ。

シャツも靴も同じだけどタバコの趣味だけが違う男と女の黒人「ツインズ」。エルビスの話をひとりでに捲し立てる店員を相手に、だけどエルビスは黒人差別者だよ、とさらりと交わせる若者。店員が去った後も、なんだかんだと喧嘩する仲良しの双子のコーヒーブレイク。


「カリフォルニアのどこかで」。タバコをやめたら焦点が合う、パワーがもどった、と話し合う二人は売れないミュージシャン。ジュークボックスにお互いの曲が入っていないことを確かめ合った後で、なんだかんだと言い合いつつ、パイとコーヒーの時代の話をする。嫌煙時代から取り残されたコーヒー&シガレッツ世代の負け惜しみ。

火をつける度に「それは命取り」だとブツブツ文句をいう老人とその親友。金をせびりにくる孫を挟んで、のどかなコーヒーブレイク。タバコは害だ、と嫌煙家の老人は言う。コーヒーとタバコが昼飯なんて、身銭を削って大企業を儲けさせるのか?そんなものを吸い続けると医者が儲かるだけだ。そして、葬儀屋もな。

銃のカタログをめくりつつ、タバコを吹かす女「ルネ」。色も温度もちょうど良かったのに、勝手におかわりをついだ店員に怒る。店員は、それを詫びたり、サンドイッチをすすめたりしつつルネに近寄る。このあたりから、完全にコント調へと変わっていく。

11のエピソードの中で僕が一番好きなのが「問題なし」だ。久しぶりに会った友人二人。呼び出された方が、呼び出した方に何か問題があるのだと思いこむ。だけど、呼び出した方には何の問題もない。本当か、言えよ、と迫る男。問題を言ってくれない彼に、自分は親友じゃないのか、と残念がるが、、、本当に問題がないのだ。と、いうお話。

その後も、10分程度の感覚で、あらゆる場所で、コーヒーとタバコを、時には、紅茶で、まったりとブレイクしつつ、話合う二人のエピソードが続く。セレブで忙しい女と、そんな彼女とは真逆の生き方をする女の「いとこ同士」。皮肉なものね、お金がなくて変えない高価なものを、金持ちがただでもらうなんて・・・。テスラコイルという、新発明?的機会を、わざわざワゴンに乗せてカフェまでもってきたジャックが、興味なさそうなメグに説明する「ジャック メグにテスラコイルを見せる」。スターと売れない俳優が本当は「いとこ同士?」、ビル・マーレーを見つけた二人が、彼の「幻覚」をとりのぞこうと、、、適当な治療法を教えるいたずら話。

そして、最期は、正しくコーヒーブレイク。1920年代のパリと、1970年代後半のニューヨークに、まずいコーヒーを「シャンパン」だとおもって乾杯するお話。

キャスティングが絶妙に面白い、らしい。この俳優がこのミュージシャンと一つのテーブルをはさんでこんな話をする、、、なんて想像すると面白い、的なところが、、、残念ながら分からないが、ただ、一度目より二度目、三度目と繰り返し見ると、ジワジワくる笑いが多い。アメリカン・ジョーク集と言ってしまえばこの映画の「色」とかけ離れるが、そういう側面から見ると、とてもなじみやすい。



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コーヒー&シガレッツ
COFFEE AND CIGARETTES
2003年 (アメリカ)

監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ロベルト・ベニーニ、スティーヴン・ライト、ジョイ・リー、サンキ・リー、スティーヴ・ブシェミ、イギー・ポップ、トム・ウェイツ、ジョー・リガーノ、ヴィニー・ヴェラ、ヴィニー・ヴェラ・Jr、ルネ・フレンチ、E・J・ロドリゲス、アレックス・デスカス、イザック・ド・バンコレ、ケイト・ブランシェット、メグ・ホワイト、ジャック・ホワイト、アルフレッド・モリナ、スティーヴ・クーガン、GZA、RZA、ビル・マーレイ、ビル・ライス、テイラー・ミード