普通に出会って、恋をして、燃え上がって、別れた。
そんな女の子と男の子のストーリー。そう言われてもおかしくはないほどのふたりの毎日が、そもそも絶対的ではない「普通」を相対的にそう思わせたことが、この映画の価値だと思う。

大学生の恒夫は、乳母車に乗り、包丁を持った女の子・ジョゼと出会う。そして触れ合い惹かれていく。じゃりん子チエ的大阪弁をあやつるジョゼは、とても強く、攻撃的で、反面、孤独で壊れやすかった。

自分だけの空間で創り上げた「強い」自分を、ジョゼの祖母は「だから脆い」と心配した。恒夫という普通の「社会」に触れたとき、それまで見ず・聞かずだったモノへの無力感が、ジョゼの中で整理出来るのだろうか、と。

魚たちのベッドで、ジョゼと恒夫は結ばれる。

それでも「ジョゼ」は生きていく。そういうエンディングがぼくは好きだ。触りもしないで避けるのではなく、恐る恐る触れてみてやっぱり熱かった現実、そこで生きているという実感。ジョゼはこれからも「ここで」生きていく。

話のテンポ、展開が気持ち良いほどスムーズで、ユーモアもある。もし自分が映画の中にいれば、きっと、こう言うだろうな、とかこうするだろうな、とか。それを感じさせるようで、まったく感じさせない異次元。だけど普通に存在する台所と漬け物なのだ。
不思議な世界が広がっている。

何より池脇千鶴の演技に圧倒される。「こわれもの」と呼ばれた女の子が明るい場所に出て、恋をして、そして、別れて、その後も生きていく過渡期を見事に演じきっている。

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