ぼくらの詩(うた)
ぼくらが失ったものって、何?
そもそも得てきたものって?

手元に残して温めておけば
「今」が変わるような代物だったのだろうか?



就職氷河期、リストラ、吸収合併にIT
リンクして繋いでおけば万事がOKのオンライン
3年たったら転職して 結婚なんてずっと先
オタクが文化で 世界中がアニメ、アニメ
コスプレ 変身願望 仮面の下は無力で稚拙
訳の分からない理由でナイフを振り回し
ニュースは適当に 時間割を 変更するんだ



時代が失った続きのあるコンテンツ
ぼくらが失ったそれは不景気の言い訳

手元で転がして 黒ずんでくれば
「未来」が安定するような序列だったのに



麗しく緑の木々に降り注ぐ陽の光
氷床も氷河も一定温度で冷たく固まったまま
世界地図は変化も変更もなく平穏で
紺碧の海の底から見上げても青空は透き通っている
その向こうの宇宙を目指した頃からきっと
そんな安穏を オゾン層と一緒に破壊したんだ
GPSで追っかける暮らしは とても窮屈だよ



ぼくらは失ったものを唱えない
かと言って得たものさえ満足に分からない

そんなぼくらの詩は だから
いつも現実味がないのだろうか


ぼくらの詩が、チグハグに貼り付けられて
また、全然違う「今」として唱われる



時には嘆いて 時には叱咤して……


唱わないぼくらの そんなぼくらの詩を。



  
by Shogo Suzuki