あけぼの
腹が鳴った
そういや
昨日の昼から何も食べてない
朝 九時 たぶん 晴れ
何か食おうかな
いや
しばらくこのまま
ここでこうして
ここでこうして 揺られよう
光が気持ちよく
隙間からの風も丁度よい
やわらかな時間だ
やっぱり 晴れだ
ぼくは
確かな現実の光にまぶたを閉じ
不確かな将来などに耳を傾ける
隣の家から漂う匂いに
鼻をひくひくさせてみたりして
ここでこうして
ゆっくり 何もせず
「焦ることなく 速くこなせ」
効率よく 生産性 生産性
カットカットカットで
全部無駄に見えてしまう 毎日
残してしまった続きをこなすだけの 毎日
いつしか
そんな時間の中で閉ざした何か
それが何か
問うことはしない
ただ切り取られてゆく紙吹雪を見て
ゴミと呼んだりもする
正解だとされた行動に沿って
リズムを乱さず 右・左・右・左
必死で笑顔だ!
大きな流れと巨大な塊に
飲まれず 潰されず
ぼくはぼくだと言い張る
ちかごろ、筋肉痛に似た鈍いしこりが
満員電車の中で爆発しそうになるよ
まぶたを閉じて耳で聞く
春でもないのに
ようよう白くなり……
昨日の過去が明日の未来とリンクして
ため息が漏れそうになる
それを
大きく伸びをして 消し去った
隣の家から漂う匂いに音が重なり
連続して 三回 腹が鳴った
ひりひりする気持ちを
やさしい風が撫でていく
こそばゆい風にうずうずするのは何だ?
「何か違う」と 首をひねる
「やっぱりおかしい」と 強くなる
確かなウズウズが 突き上げてきて
ぼくは 小銭を手に 扉を開いた