僕は如雨露で水をやる
寄せ植えのプランターには
春に咲く花ばかりが植えてある
年がら年中水をやり
陽の光の下に置いているけど
だいたい土だ。
ただ吸い込んで
すぐカラカラになって
いつも不満そうだ
無表情なくせに
悲しそうだ
だから
僕は如雨露でもって
泣くな、泣くな、と水をやり
腰を屈めて
撫でるように移動する
なのに
すぐに吸い込んで
カラカラになっていく
僕はなんだかむなしくなって
泣きたくなる
だんだん呆れて
投げ出したくなる
けど
春には花咲く土なんだ
あきれるほどきれいな
花なんだ
だから
僕はまた如雨露で。
僕はまた腰を屈めて。
暑くてうだる真夏の午後や
凍えそうに寒い一月の夜に
時々
土の上の空間の
その何もない場所に去年咲いた花を
思い描いてみる
飲んで騒いで恋をして
喧嘩したのに楽しかったな
笑って笑って吹き出して
疲れたのにまた笑ってた、な
あんな風にまた
同じ春が来るなら。
いやもっと、
きれいな花が咲いたら。
気持ちはそれだけでバウンドする
ピョンピョン跳ねて
越えられそうな気がする
そうして僕は
また如雨露で水をやる