ヒラクトビラ
無くさないよう
落とさなぬよう


ずっと
首からぶら下げてた


こんなモノで
開けられる扉なんて


いったい
いくつあるんだろう



数えながら嫌になる


嫌になって愕然とする


けど平然を装って笑っては


客観視した自分に呆れたりもする


それから
寝転がる


「仕方ない。もう遅い」と、つぶやく


つぶやいた言葉が泡になって
天井で跳ね返る音


そんな残念な声にさえ
返事をしてしまうんだから


暢気だな、と思う。


いつも
何かをする振りをしては
忙しい仕草で安全地帯を確保して


あぁ
ずっと寝転がってるな、なんて



指で作った小さな穴から
未来を覗いてみたりして


未来なんて理解不能な宇宙空間を
知った顔で漂ってやろうと
頑張るんだ


頑張ってる自信もないまま
日々こなしているんだ



首からぶら下げたままの
大切だったモノ

チャラン。


気付いたら
何個かに増えていた



そんなモノが
擦れて鳴る


ひとつずつ
眺めてみる


なんだっけな、と首を傾げる
結局
思い出せないモノばかりだ


棚に並べ
埃を被った過去と同じ


見渡しても
思い出せないモノばかりだ



壁に隔たれた向こう。


音だけもれてくる
楽園のようなところ


ぼくは
胸の上で
ジャラジャラやっては


向こうに行ける鍵はないか
本気で願ってみる



コンナモノジャ
ムコウニイケナイ



ため息。真夜中。しとしとと、雨。



だからって?
ここにいてもいいのかな?


嫌だな。
嫌だよ、な。


仕方ない、のかな。



ジャラジャラ。
ジャラジャラ。



ふと。



持ってる鍵で
開く扉を探せばいいんじゃないかと気付いた


開く扉から
違う世界を見て
そこでまた
新しい大切なモノを


集めれば
いいんじゃないのかと



とにかくここから
行けるところへ



ヒラクトビラ、カラ



吐いて吐いて
深く濃くなった
ため息色の
深海の濃紺の
言ってみれば
黒に近い「ここ」から


違う場所へ


遠回りでも
向こうへ


うん、確かに楽しそうな音がする。



  
by Shogo Suzuki