鐘が鳴る
煩悩の数だけ、鐘が鳴る。
静かな夕暮れ、町の隅で。

その音を聞きながら
「何を鎮め給うのか」
と、ぼくは思う

いま
遙か海の向こうで 
同じ呼吸が喘いでいる

風や大地が荒れ狂い
繕う表皮も突き破り
剥き出しで 剥き出しで

パンパンに膨れあがった地球が
轟音と熱波を伴って暴れている

生と死を分かつ壁を壊し
一緒くたに飲み込んでいる

叫び 涙 泥 瓦礫 砂

ぼくはただ
静かな町の片隅で
無声の泣き顔と
無臭の鮮血を眺めつつ

此処にいて、鐘を聞いている。



  
by Shogo Suzuki