良薬
吐き出して、しまった。


あまねく知れ渡った正義の粒を
そうとは知らず
吐き出して、しまった。


良かれとの想いから
差し出された優しさまでも
吐き出して、しまったと悔やんでも


沈んだ夕日は同じ軌道では昇らない


暗い夜を耐えて明日になっても
吐き出した優しさはもう。



月を見ながら
飲み込んだ事を仮想して
消化する過程を想像してみる


今のこんな気持ち以上の
例えば幸福があるかと微笑めば
また違った苦みがあるようで
キリキリと眉間に皺が寄る


そうとは知らず
吐き出してしまった
苦いだけの曖昧な優しさ


しかめっ面してでも
飲み込んでいれば……
だけど……



朝になって風が吹き
寝返りをうって思った


吐き出してしまったなら
しまったと悔やんでいるなら


それを薬に
今日を生きようか



  
by Shogo Suzuki