水曜日
同じ色と形のバスが二台
赤信号で並んで止まり
僕は青信号でその前を渡る


行き先違いの路線バス
左折と直進の二台のバス
遠くの町からやって来て
ここで出会って並んでいる


薄黄色の傘をさした老婆が
小刻みに頭を揺らして歩いてくる
すれ違い様
僕はビニール傘を高く上げ
老婆は最新の歌を口ずさんでいるように思えた
最高の声で口ずさんでいるように思えた
バスに乗り遅れたにも関わらず
そんなことは気にしない、と
最新の歌を最高の声で口ずさんでいる
ようにも思えた


雨は小降りだけれど
鬱陶しくまとわりついてくる


男の子が元気に長靴で
力強くケンケンパしながら
僕は飛び散る水しぶきを見た後
ふと顔を上げて信号を見る


青い人は点滅して
出来るから走ってこいとは言わず
点滅の速度を上げて
諦めて戻れと言っているようで


僕はまた
渡れなかった



  
by Shogo Suzuki