スイマー
腕を掻き 脚を蹴り 無呼吸で
100分の1秒でも速く 前へ 先へ

身体を絞り 一直線にして
突き刺すが如く 進んでいく


所詮 ぼくらは常に無理を強いられる

タイムが明示する勝ち負けの世界で
競争していかなければならないんだ


だけど ぼくは泳ぐのが遅い
好きか嫌いで言えば 嫌いなのに
泳いでいる


汗をかき 頭を下げ 無意識に
100分の1秒でも速く 前へ 明日へ

無駄を削り 単調にして
体当たりの如く 掻き分けてく


結局 ぼくらの常は無理を承知でこなしている

睡魔に負けそうなスイマーは今日も
足の付かない囲いの中で泳いでいるのだ


泳ぐのは嫌いだけど
プールサイドで見ていられるほど
諦めてもいない


ぼくはスイマー
泳ぐの苦手な、
だけどスイマーなんだ 



  
by Shogo Suzuki