或る年の春
或る年の 晴れた春の日
去る人と来る人が交差して
門をくぐると長い坂道だった
舞い散る桜の歌を口ずさみ
坂の途中で見上げた記憶
或る年の春
空とフェンスとアスパラガスが
やわらかく踊っていたっけ
それは、入学も卒業もない
普通の春。
あえて記念撮影した
「あの」春の日。
確か すごく晴れた午後だった
笑い転げて擦りむいた後だった
ラーメンを食べようと集合して
ぼんやり遠くを眺めていたんだ
あの年の春のページを捲ると
他に何もないこの「薄さ」が
人生も残り多いことを暗示し
同時に単調すぎると明示する
積み重なる 或る年の春の中で
いくつ「あの」春が来るのだろうか