フル
見上げると満月だった
たぶん
満ちているんだ
でも少し
欠けているかも知れない
「いやきっと
満月だ」
帰り道
明るい夜でも月はちゃんと輝いている
月を見ながら思う。
ぼくは一生の中で
ゼンタイの
いわゆる全ての半分しか
使わないんじゃないか、と
その未使用の半分を
仮に使い切ったとしたら
周りの輝きに
指をくわえて見ているだけの自分に
ちゃんと輝ける光が
そういう「満ちた」時間が
訪れるんじゃないかと
帰り道。
ぼくは思う。
だけどそんなものは一つの形だ
見えている方の姿に過ぎない
一生の中の途上の夜道で
明るいネオンに埋もれながら
ぼくは
照り返して輝く術を持たぬまま
満月だろう月の一面を見上げている