まるごとぜんぶ
あの頃
ぼくのテリトリーと
きみのフィールドが
思えば
微妙にずれていたから
すねてたのかも知れない


きみはきみで
ぼくはぼくだと


お互いにそれを分かって
だからいつも待ち合わせて


時間をあわせた
共通項を集めた


切り取った空間の中で
ふたりを合わせていた




あの頃
ぼくは自分の範囲を決めて
それ以上の全部を任せていた
それが
効率的だと思っていた
分業だからと高をくくっていた


きみの中でぼくが
ぼくの中でもきみが


視界の外にはみ出して
ゆらゆらと遠くにいって


探した時には遅かった
きみの場所を知らなかった


切り離された空間の中で
ふたりは別々になった




今頃
きみは誰かとシェアした時間で
待ち合わせた場所で会っているのかな
恋をして 楽しんでいるのかな
もしかしたら
きみのぜんぶを預けて
すやすやと
同じ空間で眠っていたりするのかな




ぼくは今になって思う
あの頃のぼくが抱えられなかった
きみのぜんぶ
まるごと守ってくれる誰かと
時には全速力で走り
たまには
何よりも優先して眠っていたりすること



あの頃
きみのフィールドに
ぼくが踏み込めなかった
弱さを友に
その弱さと戦いながら
ぼくは自分の壁を
一つずつ壊している



  
by Shogo Suzuki